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2025.12.10

【イベントレポートvol3】パネルディスカッション地域におけるミドルシニアの活躍可能性

イベント概要

本イベントは、「地域におけるミドルシニアの活躍可能性」というテーマの下、地域課題解決の最前線に立つ自治体、人的資本経営を推進する大手企業、そしてキャリアの新たな一歩を模索するミドルシニア当事者という、多様なステークホルダーが一堂に会し、新たな連携と共創の可能性を探る機会として開催されました。

今回は、第三部パネルディスカッションのサマリーをお届けします。


これまでのセッションで示された「ミドルシニアの越境学習」と国の「支援制度」を、実践の現場ではどのように捉えているのでしょうか。本パネルディスカッションでは、以下の多様なパネリストに登壇いただき、それぞれの立場から見たリアルな実践知、得られた成果、そして直面する課題を挙げ、地域におけるミドルシニア活躍の可能性を多角的に議論しました。 

パネリスト: 

モデレーター: 

単なる経験スキルだけでない、ミドルシニアの発揮する価値とは 

北海道浦幌町の山内氏は、「若者だけでは基盤が作れない」という言葉の真意を語りました。若者のエネルギーは地域活性化に不可欠である一方、事業の方向性を定め、複雑な課題を構造的に捉え、持続可能な仕組みを構築する上では、人生経験を重ねたミドルシニアの俯瞰的な視点や調整力が不可欠であると指摘。目先の事象に囚われず、物事の本質を見抜く力が求められていることが示されました。 

この点は、神戸市の堀江氏が語った協働パートナーの岡本氏への視点とも一致します。堀江氏は、岡本氏と一緒に取組むことで助かったことの一つとして「本質的な課題を迅速に把握し、すぐに行動に移す力」を挙げました。答えのない課題に対して、即座に要点を掴み、具体的なアクションに繋げるスピード感は、単なるスキルセットを超えた、経験に裏打ちされた価値そのものでした。 

「手放すこと」の実践 — 当事者が語る未経験への挑戦と意識変革 

越境学習に参加した旭化成の岡本氏は、その動機を「50代を迎え、社外で自分の力が通用するのかという不安」と「腕試しをしたい」という率直な気持ちであったと語りました。 

担当したのは「寄付金集め」という全くの未経験業務。しかし、岡本氏は過去の成功体験に固執することなく、「自由な発想」で課題に向き合いました。神戸の歴史や文化を学び、単なる資金提供のお願いではなく、「共感」を軸としたストーリーを構築することで、周囲を巻き込んでいきました。このプロセスは、まさに第一部で大桃氏が指摘した、異なる環境でミドルシニアが力を発揮するターニングポイントである「手放すこと」が発揮された実践例と言えます。 

「終身成長」を促す戦略投資 — 企業が越境学習から得るROI 

旭化成人事部の石川氏は、同社が越境学習を人事戦略で掲げる「終身成長+共創力」を実現するための重要な施策と位置付け、22年度から継続して実施していると解説しました。 

越境学習参加者への1年後の追跡アンケートでは、「自分に対する自信」(5割超が変化を実感)や「新しいことに挑戦する意欲」(約8割が変化を実感)、「ものの見え方や考え方」(約7割が変化を実感)といったポジティブな変化が、一過性のものではなく持続していることがデータで示されました。これは、社員のエンゲージメント向上とキャリア自律を促す上で、高い投資対効果を持つことを物語っています。 

今後の課題として、越境学習に「興味を持つ」から「実際に行動に移す」50代が増えることで、同社の終身成長が意図する「仕事を通じて、挑戦すること・学ぶことを楽しむ人財が集まる会社でありたい」を体現し、組織風土として根づいていくとの考えが示されました。既に職場単位では、参加者が越境学習で得た知見やスキルを日常業務で活用する、職場メンバーに活動を話すなど、よい刺激を与えているケースが散見され、この広がりと深化が期待されます。 

地域活性化起業人制度活用の鍵 — 官と民、地域と個人の「ギャップ」を埋める中間支援の役割 

ここまでの議論の中で、地域側の「自分たちのニーズをうまく言語化できない」と、ミドルシニア人材の「どう地域に関わればよいか分からない」の間には、依然としてギャップが存在することが浮き彫りになりました。 

このギャップを埋める鍵として、山内氏は、両者の間に立ち、対話を通じて協働の具体的なイメージを創出し、プロジェクトを伴走支援する「中間支援組織」の重要性を強調しました。Dialogue for Everyoneや十勝うらほろ樂舎のような組織が翻訳者・伴走者として機能することが、国の制度を有効活用し、化学反応を起こし、拡げる上で不可欠であるとの考えが共有されました。 

まとめ 

ミドルシニアの活躍は、単なる個人のキャリア課題ではありません。それは、企業の人的資本経営地域の課題解決、そして個人のキャリア自律という、現代社会における3つの大きな要請が交差する、極めて重要なテーマです。 

本イベントを通じて明らかになったのは、このテーマを成功に導くためには、以下の4つの要素が歯車のように連携することが不可欠であるということです。 

  1. ミドルシニア個人の意識変革: 挑戦し、過去の成功体験を手放す勇気 
  1. 企業の戦略的投資: シニア人材の活用・活躍に向けた戦略と投資 
  1. 国の制度的支援: 地域とミドルシニアの協働のハードルを下げる、柔軟な運用と啓蒙 
  1. 現場をつなぐ中間支援: 立場の異なる者同士の対話を促進し、協働を具体化する触媒機能 

これらの連携を社会全体で推進していくことで、年齢にとらわれず誰もが挑戦し続けられる、より豊かで持続可能な地域の未来が拓かれていくことを確信した機会でした。 

ご参加いただきました皆さま、ありがとうございました! 

リアル会場をご提供いただきました、日建設計オープンイノベーション施設PYNT関係者の皆さまに心より御礼申し上げます。 

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