大企業シニア社員がはまるキャリアの罠と脱け出す方法
今回は、大手企業社員で50代、弊社プログラム「地方共創セカンドキャリア塾」でセカンドキャリア模索中の有井さんと、元企業人事の大桃とで、大手企業シニア社員のキャリアについて、考えてみたいと思います。
どのように感じられましたか、「改正高齢者雇用安定法」施行(2021年4月1日)
大桃)「改正高齢者雇用安定法」が2021年4月1日から施行されましたね。65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置を講ずる努力義務が新設されています。 <出典:厚生労働省ホームページ>
有井)皆さまどのように感じられたでしょうか。70歳まで働き甲斐をもって今の会社で引き続き働けるなんて幸せ、と思った方もおられると思います。一方、処遇も下がった中で望まない仕事をさらに5年もやらねばならないのか・・・と落胆した方もおられるのでは。なぜ落胆しなければならないのか、会社で自分なりに努力したと思うが、足りなかったのかと思わず自分を責めたりして・・・。
大桃)そうそう、”思わず自分を責める”、やりがちですね。人事時代、ぶっちゃけ誰のせいでもないなぁと思うことが多かったのですが、それを伝える機会がなく、もどかしいなと思っていました!今の50代の皆さんが就職された頃は、”就社時代”。会社に求められるままキャリアを積み上げていくことが正しい、という時代ですよね。
大企業シニア社員がはまるキャリアの罠
有井)今になって振り返ると、“就社時代”って言われると、“そうだったのかもなあ”とは思いますが、最近まで、そんなことは思いもよりませんでした。しかし結論からいうと、落胆したのは努力が足りなかったのではなく、日本の仕組みに起因する罠にはまったのではないかと私は考えます。今からでも遅くないので、人事の方にも「ぶっちゃけ誰のせいでもない」って言ってもらいたいです。
私は今54歳ですが、40年前の高校生の頃、地方の中小企業に勤めていた父より「大企業に行けば一生安泰だ。そのためには有名国立大学に合格すべく勉強だ」と言われた覚えがあります。この言葉を心に強く留めていたためか、運よく某国立大学を卒業、大企業(化学会社/研究職)に入社できました。そして入社式、当時の人事部長から「君達は会社のエリートです。会社の方針に従い仕事に励めば、将来部長として皆さん活躍してもらいます」との言葉を頂いた記憶が鮮明に残っています。同年代の皆さまは同じような経験をお持ちではないでしょうか。
大桃)入社式で明確に「エリート」という表現があったことが、驚きです・・・!日本の教育は平等意識が強い印象があるので、ちょっとした衝撃でした。私自身は、最初の配属が工場だったので、現場の方々に、「お前は総合職で、新卒のくせに俺たちより給料が高い、それに見合う仕事しろ」と言われたことを鮮明に覚えています。
有井)私と大桃さんでは10年位入社時期が違いますが、大桃さん入社の頃でもそのような感じだったのですね。偉くなって本社に行って工場に仕事を持って帰って来いとか言われませんでした?
大桃)言われましたよ。現場の方々に。懐かしいですね(笑)
有井)同じですね。それはさておき。慶応義塾大学 小熊英二教授著「日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書)」によると、
日本の仕組みは大企業型、地方型、残余型に分類されてきた
多くの人が、大企業型もしくは地方型に入り、社会保障が受けられ生活できていた
成長経済の時はメンバーシップを重要視する大企業型が良かった
成長が終わり、平等(男女格差の解消、同一職務同一賃金)が重要視される今、真に大企業型の利点を受けられる人は徐々に減少
また地方型に属していた人も徐々に残余型に吸い込まれている
これらにより日本は不安定な社会になって来ている、とのことです。
大桃)大企業型は、時代の変化により、メンバーシップを失った、ということでしょうか?
有井)経済成長が終わり、企業の収益が伸びない中、株主等他のステークホルダーからの圧力もあり、従業員のメンバーシップを守る余裕がなくなってきたのでしょう。特に男性社員は優遇されていたから、メンバーシップの喪失の影響は大きいと思います。
大桃)なるほど。男女雇用機会均等法が施行され、女性の総合職での採用が始まったのも有井さんの頃です。
有井)さて、これらのことが私たちのキャリアにどのように影響したのでしょうか。このことに関して、日本の人事部の記事が参考になります。大企業50歳代の憂鬱なキャリア ~約半数が自分のキャリアに不満~
この記事によるとキャリアには以下の2種類があるそうです。
- 客観的キャリア:職業、地位、資格、年収など、外から見たキャリア(外的キャリアともいう)
- 主観的キャリア:やりがいや自己実現など(内的キャリアともいう)
50代において主観的キャリアの満足度の高いグループは、今後のセカンドキャリアにポジティブな志向を示しています。 会社の方針に従い仕事に励み、客観的なキャリアで優遇された私たちは主観的なキャリアを高められたでしょうか。すべてを否定するつもりはありませんが、難しかったのではないでしょうか。そうです、見事に罠にはまってしまったのです。
大桃)客観的なキャリアから、主観的なキャリアに視点を転換することは、何かきっかけがないと難しいのでは。
有井)幸いこの記事には続きがあります。
- ・この志向の傾向は、過去の満足度の高さとは無関係
- ・「過去の栄華」に固執することなく、主観的キャリアの満足度を維持、向上させることが重要
大桃)なるほど。今からでも遅くない、ってことですね!!
脱け出す方法(主観的なキャリアの満足を向上する方法)
有井)では、どうすれば主観的なキャリアの満足度を維持、向上できるのかということになります。まずは自分を知ることです。自分を知る方法の開発は最近とても進んできており、様々な研修やセミナーで、人生曲線を書く等の方法で教育が行われています。しかし教育を受けただけではその時の気分は上がるものの長続きしません。
大桃)私も長続きしなかった人です(笑)続けていくって、仕組みが必要なんですよ。
有井)ここからは地方共創セカンドキャリア塾での学びになるのですけれど。主観的なキャリアの満足度を維持向上するには、知った自分を基に、少し先のキャリアを考え、実践し、結果を振り返り、再び少し先のキャリアを考えるとの経験学習サイクルを回す必要があります。この経験学習サイクルは一人でも回すことはできますが、仲間と励まし合いながら回すと、より力強く回ります。
大桃)一期生の皆さんと接していると、まさに”力強く”回り出したなぁと感じています。仲間と実践の場。これがあれば、”いつの間にか”出来るようになっていることもありますね。後から振り返ってみて、”気づいたら一歩を踏み出していた”という感覚に近いかもしれません。
有井)大桃さんにもかつて良い仲間と実践の場があったのですね。皆さまも以下のキャリアコラムも参考にし、ぜひ仲間を見つけて経験学習サイクルを回してみてください。またいきなり転職でなく、最初は経験をすることを重視して社会人インターシップ等で実践されることをお薦めします。
投稿者プロフィール
有井 大手化学メーカー社員、地方共創セカンドキャリア塾一期生。プログラムの中で提供されている社会人インターンシップの一つとして、自らのセカンドキャリア探しの経験を基に、当社コラムを執筆中
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